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ICONIC PRODUCT #01 アノラックに込められた「サーミ」へのリスペクト

ICONIC PRODUCT #01 アノラックに込められた「サーミ」へのリスペクト

本連載「ICONIC PRODUCT」では、ブランドを体現する銘品たちをご紹介します。クレッタルムーセンの哲学は、極地に住むサーミの人々から強い影響を受けています。なかでも特に象徴的なのは「アノラック」。かつてサーミが毛皮で作っていたアノラックは、クレッタルムーセンの手によって、現代風にアップデートされ続けています。クレッタルムーセンのプロダクト作りの背景には常にサーミの人々へのリスペクトがあります。

それをもっとも体現しているのが、この「フィヨルゲン アノラック」に代表されるような、シンプルなアノラックたちです。実は、クレッタルムーセンが最初に作ったアウターもアノラックでした。

アノラックとは、イヌイットを代表する民族衣装で、北欧の極地に暮らしたサーミたちも着用していた防寒具の総称です。毛皮を細かいパーツにわけて機能的に配したもので、世界最強の防寒具という異名も持っています。構造的にはフロントジッパーなどがない、いわゆるプルオーバータイプ。

Fjorgyn Anorak ¥74,800

この「フィヨルゲン アノラック」は、そんなサーミへのリスペクトを体現したモデル。ジッパーレスなのはもちろん、一切の無駄なパーツがないミニマルさ。伝統的なアノラックの意匠は残しつつも、マテリアルはクレッタルムーセンが誇る最新のものを採用しています。耐水圧20000mmの完全防水でありながら、重量はわずか200g。もちろん環境にも配慮した素材のみを使用しています。意図せず最近のファストパッキングにも対応しているのは、その無駄を廃したプリミティブな作りだからかもしれません。レインウェアはこのくらいシンプルで十分に機能する、ということに気付かせてくれるプロダクトでもあります。はっきり言えば、アノラックは日本で人気がある形ではありません。ですが、サーミの衣服同様、壊れる要素を可能なかぎり廃したアノラックたちのプリミティブな魅力を、もう一度見直しても良いのでは、とも思うのです。

Staff Credit

Interview: Takashi Sakurai

Photo: Hinako Kimoto