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ICONIC PRODUCT #02 機能だけを追求したシンプルさ

ICONIC PRODUCT #02 <strong>機能だけを追求したシンプルさ</strong>

本連載「ICONIC PRODUCT」では、ブランドを体現する銘品たちをご紹介します。日本には、これまであまり入って来ていませんでしたが、本国などでは“クレッタルムーセンと言えば、バックパック”というくらいラインナップが豊富です。デイリーユースのものなどは日本にも入荷されていましたが、今季は満を持して、本格的な山岳用バックパック「ベーゲルマー」シリーズが登場しました。

すでに20年くらい続いてそう?たしかにクラシカルな見た目ですが、この「ベーゲルマー」はれっきとした今年の新作です。30〜50Lをラインナップするシリーズで、久々に日本に入ってきた本格的な山岳バックパックです。クレッタルムーセンの根源が体現されたアイテムと言える存在でもあります。

クレッタルムーセンには数多くのバックパックがありますが、使用しているメイン生地はわずか3種類。まず、サコッシュなどに使われる薄く、軽量なシルナイロン。「フィヨルム」などに使われている210デニールの防水生地。そして、この「ベーゲルマー」のメイン素材になっている400デニールという極厚の生地。この生地は、マイナーチェンジを繰り返しながら、古くからクレッタルムーセンが採用しつづけているもので、一番擦れるボトム部分には、もっとも引き裂き強度の高いアラミド繊維のコーデュラナイロンで補強。

コストを度外視してまで、なぜここまで頑丈さにこだわるのか。

スウェーデンの山歩きは、高所を目指すようなアルパイン的なものではなく、水平移動がメインになります。時には川を渡ったりしながら、3日間まったく人と出会わないような荒野を歩くこともしばしば。そんな時に、バックパックが壊れてしまうというのは致命的です。けっして安い買い物ではないので、壊れにくい、ということはスウェーデンに限らず嬉しい要素なはずです。

頑丈さだけではなく、永く使える工夫もあります。

いまだにアウターフレームを採用しているのもそのひとつ。フレームを外に出しておくことで、万が一壊れた際にもすぐさま補修ができるようになっています。ウエストベルトのバックルはアルミ製。樹脂製のもののように低温下で割れてしまうリスクを減らし、雪や泥による目詰まりなどの不具合も回避します。ほかにも厚手のグローブをしたままでのクイックリリースシステムなど、とことんまで現場でのリスク回避にこだわり抜いています。

そしてクレッタルの大型バックパックで特徴的なのが、キャリーオンボーンシステム。いまのバックパックはウエストベルト、つまり腰に荷重をかけるものが主流ですが、このシステムは肩甲骨で支えるという考え方。ショルダーベルトにアルミのフレームを入れて強度を出し、上部のブレをガッチリと抑えます。これによってバックパックが動くのを抑制して、歩行を安定化。

“バックパックは筋肉ではなくて、骨で背負え” というのがクレッタルムーセンの考え方です。柔らかい筋肉部分への圧迫を極力減らすことで、長時間の山行でも血流の流れを妨げず、快適に歩くことができます。

いろいろなところにジッパーが付いていて中にアクセスできたり、内部に小分けポケットが付いていたりするような便利さはありません。いわゆる“かゆいところに手が届く”というような、細かいギミックはありませんが、そのぶん“頑丈さ”と“荷物を運ぶ”ということに徹底的にフォーカス。

目的が明確かつシンプルなこういうプロダクトこそ、末永く付き合えるのだと思います。

Bergelmer Backpack 30L

Bergelmer Backpack 40L

Bergelmer Backpack 50L

Staff Credit

Interview: Takashi Sakurai

Photo: Hinako Kimoto