クレッタルムーセン社が国際山岳ガイドと共に立ち上げた体験型プログラム「 Klättermusen Experiences (以下 KMX)」。経験豊富なガイドとともに、知られざる手つかずの自然を案内するツアーが昨シーズンより本格的にスタートしました。
5月初旬、クレッタルムーセン ジャパンチームがテストツアーに招待され、北極圏に位置するノルウェー最北端の村を訪ねました。
フィヨルド地形が広がる極北スキーの旅を全3回に分けてアンバサダーの下村雄太の文と島崎貴裕の写真で回想します。
第1話:鬼のストップスノーとアプレスキー
約20時間ほどかけてオスロ空港に到着した。長時間のフライトですっかり首と体は凝り固まってしまった。僕にとって5度目のノルウェー。実は別のTripで3月下旬から2週間ほど来ていたため、1ヶ月ぶりの再来となった。

今回の旅は、ブランドアンバサダーを務める駿太くん(木村駿太)、えのきさん(榎本有希)、シマちゃん(島崎貴裕)と僕(下村雄太)の4名に加え、今回の旅に声をかけてくれたKlattermusen Japan を運営するスプートニクの代表の遠藤さんを含む計5人の日本チームが、 本国が開催するKMXツアーにテスト参加するというもの。
駿太くん、シマちゃんは札幌ベースに活動し、えのきさんは旭川、僕はニセコを拠点にしている。皆、北海道をベースに活動する歳の差1~2歳の同世代なのだけれど、冬のシーズンはそれぞれ忙しい。同じ北海道とはいえエリアも離れており、一緒に滑ることはそんなに多くない。ましてや一緒に旅に出る機会もなかった為、今回こうしてみんなで旅をすることができるなんて本当に素晴らしい機会をいただいた。しかも自分にとって思い入れの深いノルウェーだなんて。

- 僕らはスキーバッグを引きずりながら、慣れないオスロの電車に揺られ、市街地へ向かった。

僕たちは、他のメンバーより一足早くオスロに到着した。オスロの街はすっかり春を迎えていた。
長袖か半袖か迷うほどの陽気。スキーバッグを引きずりながら歩くと汗ばむほどだった。花は綺麗に咲き始め、桜も満開ではないものの、街の至るところで美しく咲いていた。僕らが住む北海道と同じくらいか、少し春が早いように感じる。美しいオスロの街を散策しながら、夜の本国チームとの合流に備え、春のオスロを満喫しつつ凝り固まった体をほぐした。

夕方になると、今回のツアーのホストであるKMXチーム、そして彼らと行動を共にしていた遠藤さんと合流した。挨拶を交わしつつ、早速クレッタルムーセン社CEOのGonzさんおすすめのレストランで決起集会。翌日から始まる7日間の旅に向けて、皆で気持ちを高めた。
翌朝、朝イチでノルウェーの中でも最北エリアの村、Nuvsvågへ向けて出発する。

飛行機、絶景のフィヨルド沿いのドライブ、フェリーと様々な乗り物を乗り継ぎ、目的地のNuvsvågに到着したのは夕方だった。あたりを見渡すと、山は白いが山肌には黒い地面が目立ち、ボトムの雪はすっかり溶け切っている。春の陽気は、ここノルウェー北部でも日本と同じように進んでいた。

- Oslo空港からAlta空港行きの便
- Alta空港から西側にあるØksfjordのフェリー乗り場までは2時間の車移動
- ØksfjordからNuvsvågへはフェリーで渡る。ミラー越しに写るジャパンチーム。
よくよく話を聞くと、この春は記録的に雪解けが早いとのこと。KMXのリードガイド、Fredさんと翌日のミーティングをしながら、ツアーへのイメージを膨らませる。
- 左:中国チームのPCさん 中:Klättermusen CEOのGonzさん 右:リードガイドのFredさん


- 翌日のルートを計画する、この瞬間も楽しい。
春が進むコンディション。暖かい天気。雪はザラメなのか、それともストップスノーか。ふと時計を見ると22時を過ぎていた。外はまだ明る買ったが、部屋に戻り、ベッドに入るなり気を失うように眠った。
流石は北極圏。時計の針が示す時間と外の明るさがまったく噛み合わない。

朝起きて窓の外を覗くと、雲の隙間から青空が見えた。思ったよりもいい天気だ。ただし、予報は雨。初日からずぶ濡れを覚悟しながら、朝食を済ませてツアーへ向かった。


- 極北の小さな村 Nusvåg にて
左から:Gonzさん、えのきさん、KMXチームのクリエイターLukeさん、KMXチームのアテンド Patrickさん、遠藤さん、PCさん、Fredさん、KMXの女神兼シェフMarieさん、僕、駿太君

先頭を行くFredさんは、うねうねと曲がりくねる川沿いを歩き、ときおり辺りを見渡しながら進んでいく。聞くと、1週間前とは比べものにならないほど雪が溶けたらしい。


それも納得だった。足元の雪は水が浮くほど湿っていて、まるでスポンジの上を歩いているような感覚だった。次第に雨が降ってきた。
「せっかくだし上まで行こう」
フレッドさんのその一言に、正直心の中では頷けなかった。隣にいる駿太くんのウェアにも、順調に雨が染み込んできている。
- 雨の中をレインコート (Syr Hood Parka) をチョイスして登る遠藤さん

鬼のようなストップスノーとは、まさにこのことか。ウェアとグローブがひんやりと冷たい。ボトムの車へ戻る頃には、テンションを上げようにも上げられず、自然と会話も減っていた。

そんな僕らを見かねてか、Gonzさんが言った。
「こんな日はアプレ・スキーで盛り上がろう」
しばらく車を走らせ、ベースの宿へ着くと大量のビールが用意されていた。寒さに震えながら着替えを済ませ、とりあえず皆で乾杯する。
アプレスキー:スキーの後に食事と乾杯を楽しむヨーロッパならではのスキーカルチャーだ
やっぱり下山後のビールは裏切らない。さっきまで苦しめられていたストップスノーなんて、もうどうでもよくなっていた。次第に皆の顔に笑顔が戻ってくる。

- 鬼のストップスノーから感動的なアプレ・スキーを楽しむ
Gonzさんが先陣を切って椅子の上に立ち、音楽に合わせて踊り出すと、シマちゃんも後に続いた。

ここにいる誰もの期待を超えるシマちゃんのダンスに、一気にボルテージが上がる。椅子の上で最高の盛り上がりを見せるGonzさんとシマちゃん。ビールもどんどん進んだ。

この時から、シマちゃんの事を「島崎ファンタジスタ」と呼ぶようになった。これをきっかけにシマちゃんは旅のムードメーカーとしてみんなに認知された。
この日の踊りは一生忘れることがないだろう。
先ほどまでの雨が降るほどの悪天候も嘘のように、気がつけば暖かい太陽が僕らの体と心を温めていた。

翌朝もコンディションは大きくは変わらなかった。朝は少し晴れ模様だったが、次第に嵐が近づいてくる。

天気が悪くなる前にサクッとツアーへ行こうという作戦だったが、あと一歩のところで嵐に捕まった。
先ほどまでの晴れ間が嘘のようだった。Fredさんは、「これが一瞬で天気がコロコロ変わるNuvsvågの天気だよ」と笑っていた。



- 思い通りにならないコンディションも楽しむしかない。

この2日間で、僕らはNuvsvågの強烈な洗礼を受けたのだった。
翌日にかけて天気は大荒れ。山の上は強風を伴う雪予報だ。このストームは吉となるか、凶となるか。実は、このストームはこの旅で唯一のチャンスだ。ストームが通り過ぎれば、後は晴れるはず。
まだ僕らはまともにターンをしていないのだ。贅沢は言わないが少なくとも普通にターンをしたい、ただそれだけ。外の強風が気になりつつも、期待を胸に、翌日に備えて眠りについたのだった。
Text:下村雄太
Photo:島崎貴裕
>第2話 に続く (準備中)

写真左から
下村雄太:
北海道喜茂別町出身。テレマーカーの父の影響を受け2歳からスキーを始め、アルペンとクロカンの競技をスタート。高校で競技スキーを引退、同時に山を滑る事の魅力を知りフリースキーヤーとしてのスキーライフを送るように。2026年、故郷の喜茂別町に自身のカフェ「aeR」をオープンした。
島崎貴裕:
北海道、洞爺湖をベースにトレッキングからSUP、スノーアクティビティまでマルチにカバーする自身のガイドカンパニー「Rir」を運営。クレッタルムーセン・ジャパンの旅や撮影ではカメラマンを務める。愛称はしまちゃん。
木村駿太:
札幌・定山渓にて1歳からできる自然の中での遊びを提案するガイド会社『Friluftsliv』(フリルフスリフ)の代表を務め、ラフティングガイドやカヌーガイドなど、さまざまな顔を持つ。冬は仲間らとともに北海道内の山々を滑りながら、映像記録を数多く残しているテレマークスキーヤー。
榎本有希:
東京都出身。雪と自然を追い求めて旭川に移住。リモートワークとアウトドアアクティビティの両立を実現し、日々北海道の大自然を楽しむスノーボーダー。愛称はえのき。
